離婚公正証書とは


民法763条で「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。」規定されており、日本では、夫婦が互いに話し合い、合意できれば、離婚をすることができます。

このように、話し合いで離婚をする方法を「協議離婚」といい、日本の離婚の約90%はこの協議離婚になります。

夫婦が離婚に合意をして、離婚届に親権者などの必要事項を記入し、役所に提出さえすれば、協議離婚は成立します。

協議離婚は、簡単な手続きで離婚ができてしまうため、本来決めるべき離婚の条件を決めずに離婚をする夫婦が多いのも事実です。

そこで、協議離婚をするにあたっては離婚の合意のみではなく、養育費などの離婚の条件も合意し、その条件を記載した「離婚協議書」を作成することが重要です。

「離婚協議書」を作成することにより、お互いが合意した内容の確認ができ、トラブルの防止につながります。

また、トラブルが発生し争いに発展した場合には、裁判で離婚協議書を証拠とすることができます。

ただし、離婚協議書は、合意した金銭の支払いが守られない場合、裁判手続きを経なければ、財産を差し押さえること(支払を受けること)ができません。

そのため、裁判を起こしてから、差し押さえをするとなると、費用や時間がかかってしまいます。

合意した金銭の支払いが守られない場合に、速やかに対処するためには、公証役場において「公正証書」で離婚協議書を作成することが有効です。

「公正証書」とは公証役場という役場において公証人が作成する公文書で、高い証明力があり、もし金銭の支払いが滞った場合、裁判所の判決などを待つことなく直ちに財産を差し押さえることができます。

厚生労働省のデータでは、養育費の支払いを現在も受けている母子家庭はわずか25%以下にとどまっています。

このため、すぐに支払いを受けられるよう離婚協議書を公正証書として作成しておくのが望ましいでしょう。

公正証書を作成する時期
公正証書は、必ず離婚届を出す前に作成しましょう。

話し合いで、養育費や財産分与などの離婚の条件に合意し次第、公正証書を作成します。

離婚届を提出した後に作成することも可能ですが、相手が公正証書を作ることを拒否したり、相手と連絡が取れなくなったりするケースもあります。

養育費など金銭を支払う側は、直ちに財産を差し押さえることができる公正証書を作成することに、消極的になるからです。

離婚後に公正証書を作る場合には、このようなリスクがありますので、公正証書が完成してから離婚届を提出することをお勧めします。

公正証書で決めるべき内容

公正証書には、夫婦で合意した離婚の条件や内容を明確に記載しましょう。

夫婦によって、記載すべき条件や内容は異なりますが、代表的なものは以下のような項目です。

  • 親権者
    未成年の子どもがいる場合には、親権者を決めなければ、離婚届は受理されませんので、必ず父母の一方を親権者に指定する必要があります。

  • 養育費
    父母は、離婚をしても、自立していない子どもに対して扶養義務(生活を保障する義務)を負いますので、子どもと別々に暮らしている親は、養育費を支払わなければなりません。金額、支払日、支払方法などを記載しましょう。

  • 慰謝料
    離婚慰謝料とは、夫婦が離婚をする際、不貞行為や暴力などの違法行為によって受けた精神的苦痛に対して支払われるお金のことをいいます。金額、支払日、支払方法などを記載しましょう。

  • 財産分与
    財産分与とは、結婚生活中に夫婦で協力して築き上げ、維持してきた財産を、離婚をするときに清算し分配することをいいます。財産分与の対象となるものには何があり、どのように分けるかということを具体的に記載します。

  • 面会交流
    面会交流とは、子どもと離れて暮らしている親が、定期的に子どもと直接会って、同じ時間を過ごしたり、電話や手紙等の方法で子供とやり取りをしたり交流することをいいます。面会の頻度、日時、時間や場所、子どもの受け渡しの方法などを記載しましょう。

  • 年金分割
    結婚中に支払った厚生年金保険料は夫婦が共同で納めたものとして、保険料の納付実績を分割する制度を年金分割といいます。分割する割合などを記載しましょう。

  • 通知義務
    支払いなどが滞った場合に備え、住所、電話番号、勤務先などを変更したときの通知義務の条項を記載しましょう。

  • 清算条項
    離婚に関する請求の蒸し返しを防止するために記載します。清算条項により、お互いに金銭その他の請求をすることができなくなります。

  • 強制執行
    支払いが滞った場合は、給与の差し押さえなど強制執行を受けても異論はないという内容の強制執行認諾条項を記載しましょう。

細かい内容はそれぞれのページで説明していますのでので、是非ご覧ください。

強制執行とは

強制執行とは、約束した期日までに、養育費や慰謝料などが支払われない場合に、裁判所を通じて給与などの相手の財産を差し押さえ、強制的に支払いを実行させる制度です。

強制執行の対象となる財産は以下のものがあります。

  • 給与
  • 預貯金
  • 不動産
  • 動産(貴金属や宝石など)
養育費の強制執行では給与を差し押さえるのが一般的です。

公正証書のメリット

離婚の際に公正証書を作成しておくと以下のようなメリットがあります。

  • 強制執行が直ぐにできる
    公正証書を作成する最大のメリットは、金銭の支払いが滞った場合に、直ちに財産を差し押さえることができる点にあります。

    離婚協議書だけでは、相手が支払に応じなかった場合には裁判の手続きが必要ですが、公正証書は裁判をせずに財産を差し押さえることができ、時間や労力の削減につながります。

    また、直ちに財産を差し押さえることができるため、相手に心理的にプレッシャーを与え、支払いを促すことができます。

  • 証明力・証拠力が高い
    公正証書は、公証役場にて、公証人が作成します。

    公証人は、裁判官、検察官、弁護士など、長い期間、法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣が任命します。

    公正証書は、公証人が作成するため、当事者の間で争いが起こった場合には、証明力・証拠力が高い文書として証拠になります。

  • 紛失や偽造の心配がない
    公正証書を作成すると、公証役場に原本が20年保管され、公証役場から外への持ち出しが禁じられています。

    そのため、手元にある公正証書を紛失した場合には再交付が可能であり、偽装や盗難などの心配がなく、安全です。

  • 財産開示手続の利用
    財産開示手続とは、金銭を支払う義務のある人を裁判所に呼び出し、強制執行ができる財産がどこにあるかなどの情報を開示させる手続きです。

    民事執行法が改正されたことにより、公正証書で財産開示手続を利用できるようになりました。

    また、裁判所へ出頭しなかったり、嘘をついた場合の罰則が強化され、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるようなりました。

  • 第三者からの情報取得手続
    強制執行をするためには、差し押さえる財産を特定しなければなりません。

    民事執行法の改正により、第三者からの情報取得手続が新設されました。

    第三者からの情報取得手続とは、裁判所から市町村、日本年金機構、銀行や証券会社等に対して情報の開示を求めることが出来る手続きです。

    これにより、金銭を支払う義務のある人の勤務先、銀行口座や証券口座が分かるようになります。

    勤務先に関する情報取得手続について、情報取得手続を申し立てるには、先に財産開示手続を行うことが必要です。

    預貯金等に関する情報取得手続については、先に財産開示手続を行う必要はありません。


公正証書のデメリット

公正証書を作成すると大きなメリットがありますが、以下のようなデメリットもあります。

  • 必ず支払われるわけではない
    公正証書を作成すれば、必ず支払いを受けることができると勘違いをされている方も多くいらっしゃいます。

    確かに、公正証書があれば相手に財産がある場合には、財産を差し押さえること(支払を受けること)ができます。

    しかし、相手が無職で財産が何もない場合には、差押える財産がないので強制執行ができません。

    財産がなくても、働いている場合には給料を差押えることができます。

    そのため、財産の無い相手が養育費を支払いたくないなどの理由から仕事をやめると公正証書を作成していても強制執行ができないことには注意が必要です。

  • 手間・時間・費用がかかる
    夫婦で話し合いの上、公正証書の原案である離婚協議書を作成し、公証役場へ連絡をし予約をとり、公証人に確認してもらいます。

    公正証書に記載できない内容や間違っている点などの修正を繰り返し、必要書類を用意し、原則として夫婦2人が決められた日時に公証役場を訪れなければなりません。

    公証役場の業務時間は、平日の9時~17時までなので、この時間帯に予約を取り公証役場へ赴く必要があります。

    また、公正証書を作成するには、公証人への手数料がかかります。

    公正証書に記載される養育費などの金額によって手数料が変わります。

    このように公正証書を作成する場合には、手間・時間・費用がかかります。

当事務所では公正証書の作成や公証役場での手続きの代理を承っております。


公正証書作成の流れ

公正証書作成の大まかな流れは以下のようになります。

①公正証書の原案(離婚協議書の作成)
夫婦で話し合い、親権者や養育費など離婚の条件や内容を決め、公正証書の原案となる離婚協議書を作成します。

②公正証書原案の修正
公証役場に連絡の上、予約をとり、公証人に原案の確認をしてもらい、原案の修正を繰り返します。

③必要書類の収集
公正証書の内容により異なりますが、以下のような書類が必要になります。

  • 戸籍謄本
  • 実印と印鑑証明
  • 運転免許証やパスポート
  • 不動産の登記簿謄本(財産分与)
  • 年金手帳(年金分割)
  • 委任状(代理人)

④公正証書作成日の予約
公正証書の原案が完成しましたら、公証役場と日程の調整をして、公正証書の作成日の予約をします。

⑤公正証書の完成
予約していた日時に夫婦が公証役場に行き、公正証書の内容に間違いがないか確認し、公正証書の原本に署名捺印します。

⑥手数料の支払い
公正証書を作成するには、公証人への手数料がかかります。 公正証書に記載される養育費などの金額によって手数料が変わります。

公証人手数料
公証人が、公正証書を作成した場合の手数料は、政府が定めた「公証人手数料令」という政令により定められています。

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円

  • 1億円を超える場合には、超過額5000万円までごとに3億円までは13,000円、10億円まで11,000円、10億円を超えるものは8,000円を43,000円に加算します。
  • このほかに、公正証書正本・謄本の作成手数料(公正証書の枚数1枚あたり250円)がかかります。
  • 離婚公正証書の手数料の計算は、慰謝料と財産分与は合計し、養育費は単独で、別々に手数料を計算し、その合計額が手数料になります。
  • 年金分割がある場合には、別途11,000円の手数料がかかります。

具体例
夫が妻に養育費として月々30,000円を15年間、財産分与500万円、慰謝料100万円を支払うことを内容とする公正証書を作成する場合には、以下のような計算になります。

養育費の手数料
30,000円×12か月×10年間=360万円
(支払い年数が10年を超える場合には10年として計算します。)
360万円を表に当てはめると11,000円

財産分与・慰謝料の手数料
500万円+100万円=600万円
600万円を表に当てはめると17,000円

合計
11,000円+17,000円
手数料合計28,000円

公証人手数料は28,000円になります。

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