コラム

○行政書士と離婚について

 行政書士とは、行政書士法第1条の2に「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。」と定められており、まさに、離婚協議書は、権利義務又は事実証明に関する書類に該当します。

 日本の離婚の90%は協議離婚であり、裁判所の関与がなくても、親権者を決めさえすれば、当事者の合意で、離婚をすることができてしまいます。

他国では、協議離婚を認めていない国のほうがメジャーであり、協議離婚を認めている国は、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、タイ、中国、韓国など少数です。

 また、他国では、決められた養育費が支払われない場合、国による養育費立替払いや、養育費の履行強制制度、国による制裁などを行っているケースなどもあります。

 これらのように、協議離婚ができなかったり、養育費を国が取り立てくれたりする国では公正証書作成の必要性は少ないが、日本にそのような制度はありません。つまり、協議離婚をする場合には、必ず、離婚協議書を公正証書にして、強制執行をとれるように準備することが非常に重要です。

 行政書士は書類作成のプロフェッショナルであり、また、離婚を専門業務にしている行政書士は、離婚問題でお悩みの方のお力になることができると思います。

 

 

○婚姻費用について

 夫婦がやむを得ず別居に至った場合、夫婦には生活保持義務(自己と同程度の生活水準まで扶養する義務)があるので婚姻費用を支払う義務が生じます。

 この時、問題になるのが婚姻費用の支払い時期です。つまり、別居時に相手と婚姻費用について合意できていればよいが、婚姻費用の合意せずに別居した事案で、過去に遡って別居時からの婚姻費用を請求できるのか?という問題が起こります。

 裁判所は様々な事情を考慮し、過去に遡って婚姻費用の支払いを認めたものもありますが、「相手に請求した時から婚姻費用は支払を受けることができる」と考えるのが一般的です。

 婚姻費用をもらっていない方は、請求した証拠が残る内容証明でなるべく早く相手に請求する必要があるといえます。

 

 

○公正証書作成までの流れ

お客様に公正証書作成までの流れを尋ねられますので、ここで解説させていただきます。まずは、お互いが離婚に合意していなければ、離婚協議書を作成するのに時間がかかってしまいますので、離婚について合意している場合を前提に説明します。

①当事務所とお客様とで、面談をして、公正証書原案を当事務所が作成いたします。
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②原案についてご夫婦で確認をしていただき、必要な場合は当事務所が修正を行い、内容が決定する。
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③夫、妻の印鑑証明と戸籍謄本をお預かりし、当事務所が原案を公証役場に持ち込み、公証人と打ち合わ せをし、必要であれば修正を行う。
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④公証役場に出向く日時を調整し、公証役場での手数料をお伝えします。
 ご自身、相手が公証役場へ行くことができない場合は、委任状を作成していただきます。
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⑤公証役場で公正証書の文面を最終確認し、公正証書に署名捺印をし、送達、執行文付与を申し立てる。
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⑥公正証書を作成できたら、安心して離婚届を提出することができる。

大まかに以上のような流れになります。当事務所が受任してから公正証書が作成できるまでの期間はおおよそ3週間~4週間ぐらいになります。

 

 

○将来の退職金について

 最近、テレビなどの離婚特集を見ていると、将来の退職金を分与してもらえるといった紹介がなされています。ただし、この説明は正しくはなく、退職金も財産分与の対象になり得るといった方が正確です。

 判例では、「将来の退職金も、近い将来に受領しうる蓋然性が高い場合には財産分与の対象になる」と判断しています。しかし、支払時期、評価方法、退職が何年先であれば退職金が分与の対象になるのかは、統一されておらず、個別に判断するしかありません。

 支払時期については、離婚時に清算や、退職金支給時などがあり、評価方法については、将来受給できる退職金を婚姻期間で按分し中間利息を控除することによって、離婚時の支払額を算出する方法等があります。

 退職が何年先であれば分与の対象になるのかについては、現在終身雇用体制も崩れ、判断が難しいです。中小企業より大企業、退職金支給まで残り10年より、3年のほうが蓋然性が高いといえるでしょう。しかし、相手が公務員であれば、退職まで10年でも蓋然性が高いといえるでしょう。

 退職金を財産分与に含めるのであれば、金額が少なくても、離婚時に清算しておけば、将来の面倒も解消できるでしょう。

 

 

○有責配偶者からの離婚請求について

 以前は、昭和27年の判例が維持され有責配偶者からの離婚請求は認められていませんでした。最高裁は、この判決について有責配偶者の夫からの離婚の請求が認められることは、妻は踏んだり蹴ったりであるとして請求を棄却しました。

 しかし、最高裁は昭和62年に別居期間が36年に及ぶ有責配偶者からの離婚請求を認めました。このケースは、夫が別の女性と交際をして、子供を作り認知もしている状況でした。

 この時、裁判所は有責配偶者からの離婚請求が認められるための3つの要件を示しました。それが以下の3点です。

①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
②未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容 することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと

 最近では、②の未成熟児がいても離婚を認めたり、③は婚姻費用の負担や離婚給付での解決により認めたり、条件も緩和されてきています。。

 有責配偶者からの離婚請求でネックになるのは、①の別居期間であると思います。今までの判例では、最高裁で最短で8年弱です。(地裁、高裁ではもっと短期間で認めたものもあります)

 有責配偶者から離婚の請求をされた場合は、証拠さえあれば8年間ぐらいは婚姻費用を受けながら離婚についてどうするのか考える猶予があるといえます。